医療コラム

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主流となっている検査法で得られた胚染色体検査の新しい見解

文/茂盛病院 陳建宏博士、李俊逸医師

関連文献による証明
早期流産の少なくとも半数は胚における非整倍体に起因することが明らかになっています。そのため、人工生殖治療においては、胚移植前に胚の染色体状態を正確に診断することが重要です。現在、臨床で最も広く用いられている着床前染色体スクリーニング(PGT-A)プラットフォームは、次世代シーケンシング(NGS)です。本検査法は流産リスクの低減に寄与するとともに、着床率および生児獲得率の向上、さらに妊娠成立までに要する期間の短縮といった臨床的有用性が示されています。

さらに、検査法の解析精度の向上に伴い、PGT-A解析は従来のような胚を「整倍体」か「非整倍体」かで判定する二分的評価にとどまらず、より詳細な染色体異常情報の分類が可能となっています。具体的には、
全染色体異数性(whole chromosome aneuploidy:WCA)
部分染色体異数性(segmental aneuploidy:segA)
全染色体モザイク(whole chromosome mosaicism:WCM)
部分染色体モザイク(segmental mosaicism:segM)
などが挙げられます。

しかし関連文献では、栄養外胚葉細胞を用いた解析結果が、胚の実際の状態を必ずしも100%正確に反映するとは限らないことが指摘されています。さらに、PGT-Aで異常と判定された胚であっても、内部細胞塊が正常な整倍体である可能性があり、移植後に正常な胎児へと発育した症例も報告されています。このことは、NGS解析検査法による結果にも一定の不確実性や変動性が存在する可能性を示しています。


盲検前向きコホート研究(Blinded prospective cohort study)は、NGS検査法による胚染色体状態診断の正確性および予測力を明らかにすることを目的とし、既にNGS解析結果が判明している胚(n = 100)を対象としました。対象胚は再度四分割し、40個の全染色体異数性(WCA)、20個の全染色体モザイク(WCM)、20個の部分染色体異数性(segA)、20個の部分染色体モザイク(segM)から構成される胚を採取しました。

採取後、検体は情報の連結を解除し、無作為に識別番号を付与したうえで外部検査機関へ送付し、独立した一塩基多型アレイ(SNP array)を用いたPGT-A検査法により、胚染色体状態の再解析を実施しました。さらに、重複検査結果の一致率をもとに、染色体モザイクの有無を評価・判定しました。


結果から得られた知見は以下の通りです。

  1. 全染色体異数性(WCA)と判定された胚では、95%がSNP array解析においてもWCAと再判定されたが、5%は整倍体と判定された。
  2. 全染色体モザイク(WCM)と判定された胚では、25%のみがSNP array解析においてもWCMと判定され、残りは35%が整倍体、15%がWCA、10%がsegA、15%がsegMと判定された。
  3. 部分染色体異数性(segA)と判定された胚では、45%がSNP array解析においてもsegAと判定されたが、残りは30%が整倍体、5%がWCM、20%がsegMと判定された。
  4. 部分染色体モザイク(segM)と判定された胚では、15%のみがSNP array解析においてもsegMと判定され、65%が整倍体、10%がWCM、0%がsegAと判定された(Fig. 1)。

総括すると、NGSにより非整倍体と診断された胚(WCAおよびsegAを含む)のうち13%(8/60)はSNPアレイ解析において整倍体と判定されました。また、NGSによりモザイク胚と診断された胚(WCMおよびsegMを含む)のうち50%は、SNPアレイ解析では整倍体と判定されました。

さらに、NGSでsegA染色体欠失(chromosomal deletions)と判定された胚と比較して、segA染色体重複(chromosomal duplications)と判定された胚は、SNP array分析において少なくとも一度は整倍体と判定される割合が高い結果となりました(87.5% vs. 33.3%)。そのため、SNP array検査結果との一致率は有意に低下していました(12.5% vs. 66.7%)(P < 0.03、Fig. 2)。

以上のNGSおよびSNP arrayによるPGT-A解析結果から、WCAの診断については両検査間で高い一致性が認められました。すなわち、NGSによるWCA判定は胚染色体状態に対する予測精度が高いことを示しており、WCAと判定された胚の移植は推奨されません。

一方で、NGSにより診断されたその他の染色体異常所見については、胚染色体状態の判定精度に関してなお議論の余地があり、その結果としてNGSとSNP arrayとの一致率は低下する傾向がみられました。

現在の最先端PGT-A技術においては、NGSおよびSNP arrayのいずれにもそれぞれ利点と限界があります。例えば、SNP arrayは片親性二倍体(uniparental disomy)の検出が可能である一方、判定結果は整倍体と非整倍体の区別に限定されます。他方、NGSはモザイク胚の検出において高い感度を有し、必要な人員およびコスト面でも比較的効率的であることから、現在世界的に胚染色体状態の解析に広く用いられています。

本研究では、両検査法の検査結果を比較することで、栄養外胚葉(TE)細胞を用いたPGT-Aが胚染色体状態の予測において重要な知見を提供することを示しました。さらに、NGSによりWCM、segA、segMと診断された胚については、一定の条件下で移植の可能性を有することが示唆されました。


参考文献

Cascante SD, Besser A, Lee HL, Wang F, McCaffrey C, Grifo JA. Blinded rebiopsy and analysis of noneuploid embryos with 2 distinct preimplantation genetic testing platforms for aneuploidy. Fertil Steril. 2023 Dec;120(6):1161-1169. doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.08.010. Epub 2023 Aug 11. PMID: 37574001.

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