医療コラム

子宮内膜PRP療法がさらなる進化-不妊治療の新たな選択肢

2019年、愛子内親王殿下のご誕生に携わった日本の生殖医療の権威であり、山王病院院長を務める堤 治(Tsutsumi Osamu)医師が、当院の李茂盛院長を訪問しました。台湾における生殖医療分野でのPRP療法の経験を学び、日本において子宮内膜が薄い方や体外受精を繰り返し受けても妊娠に至らない患者さんへの治療に役立てることを目的としたものです。

さらに、2021年9月4日に開催された学術交流シンポジウムでは、生殖医療を代表する両医師が子宮内膜PRP療法の臨床応用について知見を共有しました。本オンラインシンポジウムには100名を超える生殖医療専門医・不妊治療医が参加し、PRP療法の最新の知見と臨床経験について活発な意見交換が行われました。

不妊女性の子宮内膜を厚くする再生医療と生殖医療を融合した新たな治療法【PRP療法】

20~40mLの自己血液から、約2mLの高濃度PRPを抽出
PRP(多血小板血漿)療法は、再生医療分野における治療法です。患者様ご自身の血液から採取した血小板を高濃度に濃縮し、特殊な技術によって活性化することで、通常の3~10倍の濃度の成長因子を含むPRPを作製します。さらに、炎症を引き起こす要因を可能な限り除去することで、細胞や組織の修復・再生を促進し、子宮内膜の改善が期待されます。また、PRPは患者様ご自身の血液を使用する自家由来の治療であるため、現在までの報告では拒絶反応や重篤な副作用はほとんど認められておらず、感染症のリスクも低いとされています。

近年、不妊に悩む方は増加傾向にあります。台湾衛生福利部国民健康署が公表した2019年(民国108年)の生殖補助医療報告によると、子宮内膜症をはじめとする子宮因子が原因となる女性不妊は全体の8.3%を占めています。子宮内膜が薄くなる原因には、人工妊娠中絶の既往、子宮筋腫摘出術、先天性の子宮異常など、さまざまな要因があります。
また、高齢による影響に加え、子宮内膜の状態は妊娠の成否を左右する重要な要素の一つとされています。一般的に、胚が着床・発育しやすい子宮環境を維持するためには、子宮内膜の厚さは少なくとも7mm以上が望ましいとされています。当院の李茂盛院長は、「PRP療法によって子宮内膜の厚みや状態を改善できれば、子宮内膜が薄い患者様や、体外受精を繰り返しても妊娠に至らなかった患者様の着床率向上が期待できる」と述べています。

長年にわたり不妊治療における再生医療の研究開発を推進

2018年に研究成果が学会で表彰 次世代PRP療法が不妊治療に新たな可能性をもたらす
近年、世界各国で行われた多くの臨床研究により、PRP療法は産婦人科・生殖医療分野において有望な治療法であることが報告されています。当院の研究チームも、2018年に台湾におけるPRP療法の生殖医療への応用に関する研究成果を発表し、台湾生殖医学会学術大会論文賞を受賞しました。

この治療は、子宮内膜が薄い方や、体外受精を複数回受けても妊娠に至らなかった方に対し、子宮内膜の厚さや内膜環境の改善が期待され、妊娠率の向上につながる可能性があります。不妊に悩む多くのご夫婦にとって、新たな治療の選択肢として期待されています。

 

日本との生殖医療学術交流会において、台湾生殖医療の第一人者である李茂盛教授は、当院が過去3年間にわたり研究開発を進めてきた、次世代の子宮内膜PRP療法について発表しました。本治療では、「子宮内膜内自己多血小板血漿注入法(Subendometrial PRP Injection:TCR-PRP)」を採用し、子宮内膜が薄いことが原因で妊娠に至らない患者様に対して、新たな治療の選択肢を提供しています。当院では、胚移植の1~2日前に子宮内膜の厚さを測定し、7mm未満である場合には、PRP療法の適応について総合的に評価します。

PRP療法なし 第1世代PRP療法(IU-PRP)
注入部位 子宮内腔
妊娠率 24% 28%

PGT-Aとの併用により妊娠率は67%まで向上

李茂盛院長は、日本の生殖医療を代表する産婦人科医との学術交流において、2018年3月から2021年6月までに実施したPRP療法の臨床成績を報告しました。対象は、体外受精を3回以上行っても妊娠に至らず、かつ子宮内膜の厚さが7mm以下の患者様です。

その結果、台湾で一般的に行われている子宮腔内PRP注入法(Intrauterine PRP Injection:IU-PRP)では妊娠率が28%であったのに対し、新たに開発した子宮内膜内自己多血小板血漿注入法(Subendometrial PRP Injection:TCR-PRP)では、妊娠率が53%まで向上しました。

さらに、TCR-PRP療法に着床前染色体異数性検査(PGT-A)を組み合わせることで、妊娠率は28%から67%へと大幅に改善することが確認されました。

この成果は、不妊治療における新たなる重要な節目であるとともに、再生医療を生殖医療へ応用した画期的な成果として期待されています。

長年にわたる研究開発と先進設備

研究成果と豊富な臨床経験を融合した生殖医療
茂盛病院は、長年にわたり生殖医療分野の基礎研究と臨床研究に取り組んできました。AIを活用した胚評価技術が欧州生殖医学会(ESHRE)で高い評価を受けたほか、PRP療法をはじめとするさまざまな先進技術の開発にも積極的に取り組んでいます。不妊治療の過程で患者様が直面するさまざまな課題を解決するため、研究成果を実際の診療へと活かし、一人ひとりに適した治療を提供しています。今後も、生殖医療分野の発展に貢献できるよう研究を重ねるとともに、その成果を医療・学術分野へ広く発信し、赤ちゃんを望む多くのご夫婦が健康なお子様を授かれるよう、全力でサポートしてまいります。