医療コラム

胚の遺伝学的検査について

当院の遺伝子検査室には、次世代シーケンサー(NGS)、マイクロアレイスキャナー、PCR装置などの高度な検査機器を備えています。専門性の高い技術と充実した設備により、安全かつ高精度な生殖医療の遺伝子検査を提供しています。主な検査には、着床前単一遺伝子疾患検査(PGT-M/旧PGD)、着床前染色体異数性検査(PGT-A/旧PGS)、着床前染色体構造異常検査(PGT-SR)があり、染色体や遺伝子の異常を事前に調べることで、胚の着床率や妊娠率の向上を目指します。

着床前染色体異数性検査(PGT-A/旧PGS)

対象となる方:
以下に該当するご夫婦には、妊娠率の向上を目的として、PGT-Aをおすすめしています。

  • 35歳以上で妊娠を希望される方
  • 習慣流産の既往がある方
  • 胚移植を繰り返しても着床に至らない方
  • ご家族に染色体数異常の既往がある方
  • 胎児の染色体異常のリスクを低減したい方
  • ご本人に遺伝性疾患がある方

▲次世代シーケンサー(NGS)を用いた着床前染色体異数性検査(PGT-A)

着床前染色体異数性検査(PGT-A)の流れ

  1. 体外受精治療を開始
  2. 採卵・採精を行う
  3. 培養室で受精させ、胚を培養する
  4. 約5~7日間培養し、胚盤胞まで発育させる
  5. 胚生検を行い、栄養外胚葉から5~10個の細胞を採取する
  6. 採取した細胞の染色体を検査する
  7. 染色体数に異常のない胚を選択し、子宮へ移植する

着床前単一遺伝子疾患検査(PGT-M/旧PGD)

対象となる方:
単一遺伝子疾患や染色体転座のリスクがあるご夫婦を対象に、遺伝性疾患を持たない胚を選択するための検査です。健康な胚を選別することで、妊娠・出産につながる可能性を高めることを目的としています。

  • αサラセミア・βサラセミア(地中海貧血)
  • 脊髄小脳失調症3型
  • 多発性嚢胞腎
  • ファブリー病
  • 強直性脊椎炎
  • ご家族に認められる遺伝性疾患に対するオーダーメイド遺伝子検査

▲全ゲノム増幅、遺伝子変異解析、DNAマイクロアレイ検査

着床前染色体構造異常検査(PGT-SR)

対象となる方:
PGT-SRは、胚の染色体構造異常(転座・逆位など)の有無を調べる検査です。

  • 反復流産(習慣流産)の既往がある方
  • 染色体構造異常の保因者と診断されている方

3つの検査の違いはどこにある?

検査項目 PGT-A PGT-M PGT-SR
検査の目的 染色体数異常の検査 単一遺伝子疾患の検査 染色体構造異常の検査
対象となる方 35歳以上の方
反復流産の既往がある方
染色体異常や染色体転座の家族歴がある方
体外受精を繰り返しても妊娠に至らない方
遺伝性疾患の保因者と診断されている方 反復流産の既往がある方
染色体構造異常の保因者と診断されている方
主な対象疾患・異常 ダウン症候群
ターナー症候群
クラインフェルター症候群
エドワーズ症候群
パトウ症候群
血友病
サラセミア(地中海貧血)
強直性脊椎炎
軟骨無形成症
脊髄性筋萎縮症(SMA)
ロバートソン転座
相互転座などの染色体転座