避妊薬とは?長期間服用した場合の副作用は?
経口避妊薬(ピル)は、20世紀における最も重要な公衆衛生上の成果の一つとされており、可逆的な避妊法として、予期しない妊娠や、それに伴って生じるさまざまな問題を防ぐために使用されています。経口避妊薬の避妊効果はどのくらいあるのでしょうか。また、その仕組みはどのようなものなのでしょうか。体に悪影響はないのでしょうか。不妊の原因になることはあるのでしょうか。
長期間服用した場合の副作用も含め、本記事で詳しくご紹介します。
避妊薬とは?
避妊薬は、黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)を成分とし、主にホルモンバランスを変化させることで排卵を抑制します。経口避妊薬には、大きく分けて黄体ホルモン単剤と、低用量の黄体ホルモンとエストロゲンを配合したものの2種類があります。また、服用するタイミングによって、低用量ピル(事前避妊薬)と緊急避妊薬(アフターピル)に分類されます。低用量ピルは毎日服用することで避妊効果を発揮し、緊急避妊薬は性行為後72時間以内に服用します。
長期間避妊薬を服用すると不妊になりますか?
長期間避妊薬を服用しても、不妊の原因になることはありません。妊娠を希望する場合は、いつでも服用を中止することができます。研究によると、服用中止から月経が再開するまでの期間の中央値は約32日であり、98.9%の女性は3か月以内に正常な排卵が回復しています。また、経口避妊薬の服用を中止した後の妊孕性(妊娠する力)は、一般女性と同等であることが報告されています。
一方で、長期間避妊薬を服用していた方が中止後もなかなか妊娠できない場合は、生殖医療専門医を受診し、妊孕性について詳しい検査を受けることをおすすめします。卵子の数が少ない場合や、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、甲状腺機能低下症、卵管水腫、子宮内膜ポリープなどの婦人科疾患がある場合は、妊娠しにくくなることがあります。詳しい検査を行い、原因に応じた適切な治療を受けることが、妊娠への近道となります。
避妊以外にどのような効果がありますか?
低用量のホルモンを毎日服用する経口避妊薬は、避妊だけでなく、さまざまな婦人科疾患の治療や予防にも広く用いられています。
- 月経周期の調整・月経日の移動
経口避妊薬は、自然な月経周期に近いホルモン分泌を再現することで、生理を早めたり遅らせたりすることができます。旅行や試験、海水浴などの予定に合わせて月経日を調整したい場合にも便利です。 - 月経痛の改善・経血量の減少
月経痛は約50~60%の女性にみられます。経口避妊薬は子宮内膜や血管の増殖を抑え、子宮内膜を薄く安定した状態に保つため、月経時にはがれ落ちる内膜が少なくなり、月経痛や経血量の軽減が期待できます。症状が強い場合は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を併用することもあります。 - 子宮内膜症・子宮腺筋症・卵巣チョコレート嚢胞の治療
本来は子宮の内側にある子宮内膜のような組織が、子宮の筋肉の中で増えてしまう状態を子宮腺筋症、また卵巣の中で増えてしまう状態をチョコレート嚢胞といいます。経口避妊薬は子宮内膜の増殖を抑えるだけでなく、異所性子宮内膜の増殖も抑制するため、子宮内膜症の治療にも用いられます。 - 卵巣嚢胞の発生リスクを低下
通常の月経周期では排卵が起こりますが、排卵がうまくいかないと機能性卵巣嚢胞が形成されることがあります。嚢胞が大きくなると痛みの原因となりますが、研究では経口避妊薬が卵巣嚢胞の発生率を低下させることが示されています。 - 卵巣がん、子宮体がんのリスクを低減
大規模な疫学研究により、経口避妊薬の服用は、卵巣がんと子宮体がんの生涯発症リスクを低下させることが確認されています。 - 骨盤内炎症性疾患(PID)の予防
骨盤内炎症性疾患は若い女性に多くみられ、適切な治療を受けないと不妊の原因となることがあります。研究では、経口避妊薬には一定の予防効果があり、骨盤内炎症性疾患の発症リスクを低下させることが報告されています。
避妊薬の副作用にはどのようなものがありますか?
黄体ホルモンの副作用
体質には個人差があるため、副作用の現れ方や程度は人によって異なります。主な症状として、吐き気、かゆみや発疹、頭痛、乳房の張り・痛みなどが挙げられます。黄体ホルモン単剤の経口避妊薬では、不正出血が最もよくみられる副作用です。多くの場合、服用を続けることで改善しますが、症状が持続する場合は、エストロゲンを併用することで軽減できることがあります。以前は、黄体ホルモンによって体重が増加すると考えられていましたが、現在の大規模な研究では、黄体ホルモンと体重増加との明確な関連性は認められていません。
エストロゲンの副作用
体質によって異なりますが、吐き気、乳房の張りや痛み、頭痛などの副作用がみられることがあります。最も重篤な副作用は静脈血栓塞栓症です。経口避妊薬を服用すると、健康な生殖年齢の女性と比較して静脈血栓塞栓症のリスクは約3.5倍高くなると報告されています。また、虚血性脳卒中のリスクも上昇し、特に前兆を伴う片頭痛(典型的片頭痛)の既往がある方では注意が必要です。エストロゲンは主に肝臓で代謝されるため、肝機能障害のある方は慎重に使用する必要があります。また、乳がんや子宮頸がんなど、エストロゲンに関連するがんでは、発症リスクが高まる可能性があります。避妊薬を使用する際は、事前に医師の診察・評価を受けることが望ましく、継続的に服用する場合も定期的な受診をおすすめします。
避妊薬に関するよくある質問(Q&A)
避妊薬はどのような仕組みで避妊するのですか?
黄体ホルモン単剤の避妊薬は、主に子宮頸管粘液を増やして精子が子宮内へ入りにくくすることで避妊効果を発揮します。また、性腺刺激ホルモンの分泌を抑えて排卵を抑制し、卵子の卵管内での移動を遅らせたり、子宮内膜を変化させたりする作用もあります。避妊率は約90%です。一方、黄体ホルモンとエストロゲンの配合剤は、視床下部・下垂体へのネガティブフィードバックにより性腺刺激ホルモンの分泌を抑制し、排卵を防ぎます。また、エストロゲンには主席卵胞の発育を抑える作用もあり、避妊率は約93~97%です。緊急避妊薬(アフターピル)は、高用量のホルモンを服用することで排卵を抑制または遅らせ、受精の可能性を低下させます。一方、低用量ピルは毎日低用量の黄体ホルモンとエストロゲンを服用することで排卵を抑制し、いずれも高い避妊効果が期待できます。
経口避妊薬はいつ服用すればよいですか?
低用量ピル(事前避妊薬)は、毎日決まった時間に服用します。通常は月経開始日から服用を開始し、21日間連続で服用します。薬のシートには服用順が番号で表示されています。21日間服用した後は7日間休薬し、その後新しいシートの服用を開始します。緊急避妊薬(アフターピル)は、性行為後72時間以内にできるだけ早く服用することが推奨されます。服用が早いほど避妊効果は高くなりますが、頻繁な使用は月経周期の乱れを引き起こす可能性があるため推奨されません。
経口避妊薬は医師の処方が必要ですか?
避妊薬は、医師の診察を受けたうえで処方を受けることをおすすめします。体質や健康状態に応じて適切な種類や用量を選択できるほか、服用中に副作用がないか定期的に確認し、必要に応じて用量を調整することができます。また、持病や体質によっては避妊薬の服用が適さない場合もあるため、事前に医師へ相談することが重要です。薬局で購入できる一般用医薬品は用量が一定であり、すべての女性に適しているとは限りません。
避妊薬を服用できない病気はありますか?
乳がんや子宮頸がんなどの婦人科がんのある方は、自己判断で避妊薬を服用することはおすすめできません。避妊薬はホルモン製剤であるため、必ず主治医に相談し、必要に応じてコンドームなど他の避妊法を検討してください。また、高血圧の方や喫煙習慣のある方では、静脈血栓塞栓症のリスクが高まる可能性があるため、服用前に医師へ相談することが望まれます。
経口避妊薬以外にはどのような避妊法がありますか?
- コンドーム:性交時に最初から最後まで正しく使用することで、性感染症の予防にも有効です。避妊率は約79~87%です。
- 腟リング・避妊パッチ:黄体ホルモンとエストロゲンを腟や皮膚から吸収させる方法で、月1回の交換が必要です。避妊率は約93~97%です。
- 避妊注射:持続型黄体ホルモンを筋肉内に注射する方法で、避妊率は約90%、効果は約3か月持続します。
- 子宮内避妊器具(IUD):外来で子宮内に装着します。銅付加IUDは銅イオンにより精子の働きを妨げ、レボノルゲストレル放出子宮内システム(ミレーナ)は黄体ホルモンを放出します。いずれも避妊率は99%以上で、銅付加IUDは約10年間、ミレーナは約5~7年間効果が持続します。
- 避妊インプラント:上腕内側の皮下に埋め込み、一定量の黄体ホルモンを放出します。避妊率は約90%で、3~5年間効果が持続します。
- 避妊手術:今後妊娠を希望しない場合の選択肢です。女性の卵管結紮術は全身麻酔が必要で手術リスクも比較的高く、男性の精管結紮術は局所麻酔で行え、女性より手術負担が少ないとされています。
- 男性用避妊薬:テストステロンと黄体ホルモンを併用して精子数を100万/mL未満に抑える方法が研究されていますが、現在はまだ実験段階です。
- 膣外射精:避妊失敗率が高いため、確実な避妊法とはいえません。
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