医療コラム

習慣流産とは?繰り返す流産は治療すれば妊娠できる?

ようやく妊娠できたのに、なぜ赤ちゃんを育てることができないのでしょうか?

不妊症に悩む方の多くは、「なかなか妊娠できない」という悩みを抱えています。一方で、妊娠はできても流産を繰り返してしまう「反復流産・習慣流産」に悩む女性も少なくありません。

流産を経験した女性にとって、繰り返される流産は大きな精神的ショックとなるだけでなく、子宮内膜に負担がかかることで、その後の妊娠継続がさらに難しくなる場合もあります。

しかし、習慣流産にはさまざまな原因があり、多くの場合は適切な検査によって原因を調べることが可能です。

赤ちゃんを無事に出産したいと希望される場合は、できるだけ早い段階で専門医に相談し、原因を特定したうえで適切な治療を受けることが大切です。原因に応じた治療を行うことで、妊娠・出産の可能性を高めることが期待できます。

習慣流産とは?

習慣流産(Recurrent Pregnancy Loss)とは、自然流産を3回以上連続して繰り返す状態を指します。反復流産とも呼ばれ、以下のようなケースが含まれます。

  • 胚に心拍が確認される前に発育が停止する
  • 一度確認された心拍が、その後消失する
  • 胚が自然に子宮外へ排出される

これらの多くは、胎児の状態がまだ安定していない妊娠初期に起こります。統計によると、自然流産を2回経験した場合、次回妊娠で再び流産となる確率は約17~31%、3回以上経験した場合は約25~46%と報告されています。

習慣流産になりやすい人とは?

女性が反復流産を繰り返す原因には、年齢、遺伝子、子宮の状態、体質、また慢性疾患があり、その病状が十分にコントロールされていない場合も、習慣流産を引き起こす可能性があります。以下のいずれかに該当する方、または以下の疾患をお持ちの方は、習慣流産のハイリスク群に該当する可能性があります。妊娠を計画する前に、十分な検査・評価を受け、必要に応じて適切な治療を行うことをおすすめします。

  • すでに流産を複数回経験したことがある方
  • 高齢妊娠の方
  • 遺伝性疾患のある方
  • 抗リン脂質抗体症候群
  • 血栓ができやすい体質
  • 子宮奇形
  • 糖尿病
  • 高血圧

習慣流産の原因は?

習慣流産の原因はさまざまであり、臨床でよくみられる原因は、大きく以下のように分類されます。

胚の染色体異常 習慣流産の最も多い原因。染色体の均衡型転座(染色体配列の異常)や、胚の発育過程における染色体数の異常など、さまざまな染色体異常が含まれる。
子宮の異常 子宮の構造異常(先天性双角子宮、弓状子宮、子宮中隔など)、子宮内膜癒着、子宮筋腫、子宮頸管無力症(子宮頸管閉鎖不全)などが原因となることがある。
免疫異常 全身性エリテマトーデスや自己免疫疾患、凝固異常などがある場合、子宮内胎児死亡や胎児発育不全を引き起こしやすくなる。
ホルモンバランスの異常 甲状腺機能亢進/低下症、プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)の異常などが含まれる。
生活習慣 喫煙や過度の飲酒、慢性的なストレス、睡眠不足、長時間労働や過労などの生活習慣も、習慣流産の原因となる可能性がある。

習慣流産がある場合、どのような検査を受けるべき?

習慣流産を繰り返している場合は、身体のどこに原因があるのかを確認することが大切です。妊娠前に必要な検査を受け、原因に応じた治療を行うことで、妊娠率や流産予防の向上が期待できます。

習慣流産の方に推奨される妊娠前の検査
習慣流産の原因を調べるため、一般的には血液検査超音波検査を行い、甲状腺機能・プロラクチン濃度・ホルモン代謝の状態・自己免疫異常の有無などを重点的に評価します。

検査項目 内容
夫婦双方の染色体検査 染色体の均衡型転座やその他の染色体異常の有無を確認する。
子宮構造の評価 超音波検査、子宮鏡検査、子宮卵管造影検査などを用い、子宮奇形や子宮内癒着の有無を確認する。
自己免疫検査 習慣流産の原因となりやすい抗リン脂質抗体やループスアンチコアグラントの異常の有無を確認する。
卵巣機能の評価 基礎卵胞数、FSH、AMHなどの値を評価する。
ホルモン検査 黄体ホルモン、甲状腺ホルモン、男性ホルモン、プロラクチンの異常の有無を確認する。
PGT-A(着床前胚染色体異数性検査) 検査結果をもとに染色体異常のない胚を選択して移植する。染色体異常が原因で習慣流産を繰り返している方にとって、有効な治療法の一つ。

習慣流産が疑われる場合は、不妊治療科を受診するべき?

統計では、妊娠した女性の約15~25%が自然流産を経験するとされています。 枯死卵、妊娠初期に胚の発育が停止する場合や、一度確認された心拍が停止する場合などは、いずれも自然流産に含まれます。

自然流産が1回のみであれば、過度に心配する必要はありません。まずは十分に休養をとり、体調を整えたうえで、回復後に再び妊娠を目指すことをおすすめします。

しかし、2回連続して妊娠後に自然流産を繰り返した場合は、習慣流産の可能性があります。その場合は、不妊治療科を受診し、専門医による詳しい評価・検査・適切な治療を受けることをおすすめします。

必要に応じて、生殖補助医療を用いて良好な胚を移植することで、妊娠・生児獲得率の向上が期待できます。

体外受精を受けることで、流産のリスクを減らすことはできる?

染色体異常は流産の主な原因です。自然流産、習慣流産のいずれにおいても、流産となった胚の半数以上に染色体異常が認められるとされています。その原因としては、精子や卵子の形成過程、あるいは受精後の胚の細胞分裂の過程で異常が生じることが考えられます。また、習慣流産の患者さんの約5%では、ご夫婦のいずれかに染色体異常が認められます。

体外受精では、採取した精子と卵子を体外で受精させ、培養して胚を作成した後、子宮内へ移植することで妊娠の成立を目指します。

この過程で、染色体が正常な胚を選択するために、PGT-Aを実施する第三世代体外受精を選択することができます。胚の一部を採取して染色体を検査し、染色体異常のない良好な胚を選んで移植します。

臨床的には、染色体異常による流産のリスクを低減し、習慣流産の患者さんにおける体外受精の妊娠継続率や生児獲得率の向上が期待されています。

当院では、PGT-Aに次世代シーケンサー(NGS)を導入しており、23対すべての染色体を解析することが可能です。従来のマイクロアレイ法と比較して、より高精度な胚の染色体スクリーニングを実現し、検査精度はほぼ100%とされています。

流産を繰り返している方は、PGT-Aの実施を検討してみることをおすすめします。

流産の前兆にはどのような症状がある?どのような時すぐに受診するべき?

妊娠中に腟からの出血強い腹痛・腹部のけいれん骨盤部や腰の痛みなどの症状が現れた場合は、自然流産の前兆である可能性があります。妊娠初期には、少量の茶色や褐色のおりもののような少量出血がみられることがあり、これは妊娠初期によくみられる症状の一つであるため、過度に心配する必要はありません。

しかし、出血量が増えたり、鮮やかな赤色の出血がみられたりした場合は、念のため医療機関を受診することをおすすめします。また、腹部・骨盤部・腰に強い痛みがある場合や、痛みが長時間続く場合、さらに出血を伴う場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください。